2011年05月04日

沢のタイムカプセル

4時半起床。鳥のさえずりが聞こえるので雨は降っていないようだ。
ムカシトンボの活動開始まで時間があるので早く家を出ることはせず部屋でのんびり過ごすことに。
ふと思い立ってチョウのスケッチをしてみたのだが・・・予想以上に残念な結果となってしまったので早々に放棄し授業の復習に切り替え。とりあえずノートを読み返し、字の汚さには「まあ黒板に書いてあることを写しているわけじゃないんだし仕方ないじゃん」と開き直り、そうでない文字を見つけた時は反省し、洋書の予習をしてから去年の自分のブログを読み返してみる。

・・・恥ずかしすぎて読めない!

色々と狂いまくっていて目が当てられない。

8時半過ぎに出発。ウェーダーを宿舎からはいていく手もあったが現地まで持っていくことに。箱の形状がantの荷台と妙にマッチしているので運びやすくて助かる。いつもの駐車場についてさっそくウェーダーに履き替え、山に入る前に周辺散策。中くらいのヤマカガシを見かけるが、どうもヤマカガシがたくさんいるらしい。
まず開けていてムカシトンボが好きそうな沢のたまりの様子を見に行くと、おや・・・?



翅を開いている時点でムカシトンボの可能性はなく、すぐサナエトンボだと気付けたのでがっくりすることもなかったが、これがかのヒメクロサナエなのだろうか。撮影後網を使わずに採集成功。複眼が柔らかいので三角紙に挟み込むのを一瞬ためらうが、サナエ系はシオヤトンボやカワトンボと違ってこの先出会えるとは限らないので持ち帰ることに。
登山道が沢から離れる分岐点を折り返し点と定め、ここでしばらく様子を見ていると、網がとても届きそうもない上空で優雅に飛ぶトンボのシルエットが・・・この時期あんな場所にいるトンボは一種類しかいない。これがムカシトンボか!なすすべもなく、しばらく見やったのち下山し昼過ぎに再び戻ってくることにする。

せっかくウェーダーを履いているので多数ある湿地を巡ってみることに。昨年kojeeeさんに案内されて見聞した環境と似通っているところが多く、これからがとても楽しみなのだが、この時期の主役はホソミオツネントンボ。まずは湿地にて交尾写真をおさえる。メスはオスに比べて体色変化が少ない。




続いて近くの池でとんでもない光景を目の当たりに…カップルだらけの大産卵大会となっていた!
本日のベストショット(´Д`)



ホソミオツネンは高校時代なぜか生物室の裏の(化学室の方が近いかな)サンゴジュに止まっている個体を採集したことがあるだけで全く縁のなかったトンボなのだが、こちらでは完全に「普通種」状態。今までの感覚が狂って治りそうもないのだが、これが悪いことなのか否かはよくわからない。
撮影もそこそこにして山に戻ろうとすると、道端に何やらキラキラするものが飛び交っている…
ニワハンミョウだ。



ウェーダーを着て陽の当たる山道で腹ばいになると暑くてたまらない。直射日光も手ごわいのだが内部のムレ具合も相当不快だ。幸いすぐそばに沢があるのでまだいいのだが、これが夏になったら宿舎から履いていくなんて、とてもじゃないけどやってられないだろうなあ…

先ほどの分岐点まで戻って上を見上げてみる。まだムカシトンボらしき生き物が飛んでいる様子がわかる。さらに上に行ってみようとするが―ありえないと思っていたが―上に行けてしまう。ここで水色がかった小さなチョウが活発に飛んでいるのを見かけるが、ムラサキシジミにしては若干色が薄いので捕まえてみたところ・・・コツバメ!!!



※採集後撮影
え?なんで?まだいるの?てかなんでここに???
全く訳が分からないのだが、どうやらコツバメはこういう所にいるみたいだ。う~ん予想外。
※ちなみにコツバメはミヤマセセリと同じく”Spring ephemeral”の類です。

ここで待っていると、ムカシトンボらしきトンボが2度ほど接近してきたのだがとても捕まえることはできない。眺めも良く登山者の声も聞こえてこないのでここで何時間でも粘っていられそうだが、沢で飛んでいる様子もぜひ見てみたいのでこの場所を後にする。
林内は午前中ほど陽が差し込まず視力が追い付かない。この薄暗い沢でムカシトンボを識別することはできるのだろうか。というより陽が当たってなきゃやってこないんじゃないか…比較的明るい沢沿いに降り立ち、脇で様子見。何もやってこないので移動しようかなあと思っていた矢先・・・

これか!

水際をゆっくりとパトロールするトンボらしき虫体を貧弱な610の眼がとらえた!こんな至近距離で見られるなんて!!
この個体はすぐ見えなくなってしまったが(≒上流へ行った)、しばらくここで待っていれば他の個体がやってくることを確信。次にやってきた個体は何やらシダの奥へ消えて行ってしまった。駆け寄ってみると・・・
産卵!!!



―610のシナリオでは、まず♂を捕まえ、その次にできることなら♀を見つけ、とりあえず1ペア確保してから生態写真を撮ることになっていた。だがいつの間にか駆け寄った610の右手には網ではなくカメラが握られていた…順序が逆転してしまった!
あんまりにも予想外すぎてドキドキする暇がなかったのだが、とりあえずこの♀の処遇を考える。産卵中悪いが採集欲には勝てない。でも網は岸に置いてある…記念すべき第一頭目は文字通り610の「手」に渡った。ムカシトンボを手づかみ!!610のテンションがどれだけ高いかは赤文字の乱用を見れば十分ご察知いただけると思うが、この喜びを直接伝えられる人がいなくてこうやって発散しているのである。

このメスを保存している目の前で、今度は一瞬ペアリングが成立しているではないか!さっきまでは雲の上の(雲は無かったが)存在のように思えたものが、こうして目の前でのんびり飛んでいる姿を見ていられるのは何という至福なひと時なのだろう。忘れかけていた感覚が蘇ってくるようなこの心地…ここが「地元」だなんていまだに信じられない。
そのけしかけた♂を追跡して無事に捕獲!網でとらえた時の「カサカサカサ…」という音が、この音を聞いてから全身にほ乏しる達成感がまたたまらない。お初はずいぶんイレギュラーだったが、ついに長年の憧れが叶ったのだ!
ムカシトンボの存在自体はたぶん幼稚園のころから知っていたと思う。図鑑には「生きた化石」として紹介されていないものはなく、その名前からしても幼心に他のトンボとは違う風格が漂っているような印象を感じてはいた。
ちなみにムカシトンボのシルエット自体は初見ではない。高1のGWに生研の新歓旅行で高尾山まで行ってプラナリアを採集しに行ったのだが、この集合時間がけっこう遅めだった。その当時から610は早起きができる体質になっていたのでこの時間を無視して始発で裏高尾まで行って虫さがしをしていた(のちに合流)のだが、ここで例のシルエットを見ている。
そうしてようやく「生きた化石」をじっくり眺めることができる機会が訪れた。やけに毛深い顔、灰色の眼、反りに反る腹部…数億年の歳月を経て今こうして生き続けている彼らを前にして、やはり他のトンボとは違う風格を実感。
さらにもう一♂追加して採集は終了。今のカメラでは難しいのだが、もう必要最低限は捕まえたのだから残りの期間は飛翔・交尾写真にも時間を割ければなあ…



駐車場に戻って山ですれ違ったおじ様おば様方にムカシトンボを披露。身近な山にこういう珍奇な生き物がいることを知ってもらえたことは(新参者ながら)うれしく思う。

~・~・~

長くなりすぎましたね。勢いで書いているのでムカシトンボ以外の事例の印象が薄くなってしまい、これでもだいぶはしょられています。

明日は昼から北千住でお呼ばれを受けたので、8年ぶりになると思いますが行ってまいります。
何のお呼ばれでしょうか、予想してみてください(´Д`)
それまでは何してよう・・・ムカシトンボの産卵は見られそうもないしなあ…  続きを読む


Posted by Impulse610 at 18:10Comments(5)