2015年03月18日

0 time から始まる悪魔への隷属

今朝は7時半ごろ出発し,ひたすらピンセットを研ぐ.「黒い悪魔」の卵を扱うには,ただでさえ細いピンセットの先端をいっそう細くする必要があるのだが,610は不器用にして粗雑なため,左右の幅が合わなかったり,せっかく細くしたのに先端を曲げたり,ひどいときには欠かしてしまったりしてしまうので,この作業から逃れることはできない.なおたちの悪いことに,研いだ時には充分だろうと思ってみても,実際に使って見ると違和感があったりするため,一度研ぎ始めたが最後,数日に及ぶ調整を強いられる.今日は2日目で,左右の長さを揃えるため大胆に削ること1時間半.ようやく状態がよくなったかなあと思って悪魔の卵を扱ってみるのだが微妙に左右が揃っていない.隷属への闇は深い.
さて研いでから昨日採集した悪魔たちを1匹ずつ個別の容器に移す作業に隷属するのだが,悲観していたほど困難な作業ではなく,案外順調に仕分けられた.この際,本来ならば喜ばしい出来事として,今まさに卵塊を形成している魔女を7匹も確認することができた.産みたての卵を我が界隈では"0 time"と崇め奉っており,その入手には特に力を入れている.なぜかと言えば,0 time で得た卵が孵化するまでの日数が分かることで,正確な胚発生ステージの把握や,いつ産んだか分からない卵の産卵時刻の推定が可能だからである.センター構内で採集した30匹近い悪魔の中から,1日でこれだけ卵が入手できれば,他の場所で採った大量の悪魔たちの個別化に労力をかける必要もあるまい.ということで後半は随分と手を抜くことにしたが,まあ問題はないだろう.
そして今思うことは,福江や小笠原に行く前の悪魔への隷属は無意味だったのでは,という疑念である.1月中旬から1カ月近く,ことあるごとに成虫を採取してきたのだが2度しか採卵のチャンスに恵まれなかったのである(しかもいつだれが産んだのかよく分からない).ここから得られるのは,この時期は採卵以外の仕事にリソースを割くべきであるという,より良い隷属へのタイムマネジメントである.
さて 0 time が得られたのだから,あとはひたすら固定していくのみである.理想的には採卵の瞬間から1時間後までの間に4回くらい,その後2時間から4時間おき位の隷属ができればいいのだが,私はまだ未熟な奴隷にして,一度ですべてこなせるだけの忍耐が足りない.とりあえず2時間を目安に固定していく.今晩は今年度で菅平を離れる先輩のフェアウェルパーティーが寮であったのだが,カワゲラの奴隷であるがために,パーティーのあとに研究室に戻っての固定を強いられる人生を歩まねばならない.かくのごとく,カワゲラの奴隷の人生は 0 time に蹂躙されるのである.

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明日も明日とて,午前6時半の固定が強いられますが,それを乗り切れば少しだけ安寧が訪れます.そしてすぐさま,カワゲラ目の重要な発生形質を仕留める為の,よりシビアな隷属が求められることになります.この現実を鑑みると,やはりカワゲラのいない南の楽園からの追放が早まったことは奴隷の人生として正解だったとしか思えません(ほんとうは捌かれるのを待つ動物の骨をいじりたかったのですが…).  


Posted by Impulse610 at 18:10Comments(0)