2014年03月18日

砂浜に消えた13,500円

今朝は5時に目覚ましをかけていたのだが結局起きたのは6時。お湯を飲み、夜のうちに大鍋に入れてベランダに出しておいたタヌキを補食室で煮込む。骨格標本作りのために人間の調理場を使うとはいかにも狂気じみているが、残念ながらこれは蛮行とは言えない。なぜなら610のプロセスは牛肉や豚肉の塊を煮込むそれと本質的な差が認められないからである。その上、内臓が腐っていたとはいえ肉はまだまだ新鮮で、獣臭さはあるが衛生的な問題は家畜の肉を扱う場合と変わりなかろう。尤も、肉が茹で上がってしまえば他の居住者がふたを開けても小体が判別できないだろうし、おまけにいいにおいがするのだからもしかしたら一般料理と勘違いするかも知れない。
※タヌキの肉はシカよりも癖があり、また後味が残る。一度茹でた水を捨ててもう一度煮たものでこうなのだから、非常に臭みが強いと言えよう。脂肪分が多いこともあるだろうが、茹で上がったタヌキそのもののにおいはかなり独特である。まあ食べられないことは無いが、味付けなしのこのタヌキ肉だけで夕食を済ませよと言われると苦しいものを感じる。
煮たタヌキを回収し大急ぎでビーチコーミングの準備を整える。

砂浜に消えた13,500円


Yさんに拾ってもらい、これ以上ロードキルが見つかったら処理に困っちゃうなあなどとたわごとを呟きながら走っていると・・・対向車線にウサギが死んでいるではないか! 
状態が心配だったが、頭骨も砕けている様子が無く外傷もない上に眼もくぼんでおらず、においもない。脱糞した様子が見られるので、もしかしたら車にぶつかって斃れたあともしばらく生きていたのかもしれない。これは海岸に到着する前から素晴らしい収獲である。
その後宗教について話したりしながら波崎に到着。つくばからおよそ3時間、思っていた以上に遠かった。

まず利根川河口付近で鳥見をするのだが、ウが大量にいたほか、スズガモやヒドリガモの他にオスメスとも同じような色合いで地味なカモ(オカヨシガモのようだ)、オオバン、カモメが2種類見られた。それにしても大変な風の強さだ…
砂浜に消えた13,500円


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そして波崎海岸へ向かう。微妙な空模様と木目の細かな砂がマッチし、辺りには終末感が漂っている。砂は吹き飛ばされているだけならいいのだが、耳をはじめ体や衣服のありとあらゆるところに入り込んでくるからたまらない。
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波がいくつも押し寄せてくる様がまた物悲しいのだが、サーファーが何人かいた。彼らはこういう天候に対して鬱々としないのだろうか。
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砂浜には車が乗り入れており、長大な波崎海岸のことだから車で移動できれば便利だろうということで乗り込んだわけだが、これが悲劇の始まりであった。Yさんが大きな椅子が転がっていることに興味を抱き、そちらに向かって車を走らせた・・・
砂浜に消えた13,500円


これはやばそうだということで後退を試みたのだが…空回り。悲しきかな、我々は砂浜でスタックしてしまった。
砂を掘ったり、靴や布きれをかませてみたりいろいろ試行したものの、全ては無に帰す。最終手段として救済を依頼することになってしまった。

610は610で、わざわざ連れてきてもらったのにもかかわらず散策を強行する暴挙に打って出た(救援部隊が来るまで1時間くらいかかるとのことだったので暇乞いをし、受理されたのである)。
砂浜に消えた13,500円


遠くから見ると、改めて砂浜に車が嵌ってしまったことの絶望感を確認。
砂浜に消えた13,500円


まあこの時よりはひどくないような気もするが。
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しばらく歩いていたら目の前に大きな大きな骨が転がっていた。思わずおおっと唸ってしまったが、発狂するほどの喜びは感じられない。それはこの骨が海獣ではなくウシ様の陸生哺乳類である可能性がきわめて高いからである。
砂浜に消えた13,500円


ペテルブルクで撮影したシロナガスクジラの前腕部分には、骨端が膨らんでいる箇所が見受けられない。サイズに関しては過去最大級だと思うので、それだけでも収穫だったろう。
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なかなか立派な魚の骨が転がっており、持ち帰りを試みたのだが結構重かったため(ウシっぽい骨もあるので)断念。
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それにしても鳥の死体が多い。まともな散策はあまりできなかったのだが、それでも8羽くらいの死骸が見つかった。数が多いのは素晴らしいことだが、あまり状態が良くない。いや、骨格標本作りを行うのであれば全く問題ないのだが、どことなく魅力が感じられないのである。なぜなのか…
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そんな中、なかなか状態の良い水鳥が見つかった。ミズナギドリか何かだろうか。惜しくも腹部と尾のあたりに穴が開いていたのだが、それ以外は概ねきれいでなんちゃって剥製なら作れそうな気もする(少なくともこのアングルなら問題ない)。ということで持ち帰り決定。タヌキモウサギもいる中、さらにこのトリの剥製を作る余裕はとてもないため、これは菅平へ持ち越しになりそうだ。
砂浜に消えた13,500円


ミズナギドリっぽいものを見つけたころには救助部隊が到着し、車を走行可能なところへ引き上げていた。この一件でYさんは本来不要な出費に迫られてしまったのだが、そもそも610が波崎へ捨ててきてほしいと依頼しなければ発生しなかった金額である。ここ波崎へはなんと東京駅から高速バスが出ているのだが、片道2030円かかる。また土浦から鉄路を利用しても2,210円かかる。この費用を考えると、発案者の610は今回の事件に間接的にかかわっているわけだから、それ相応の負担をすべきであろう。というわけで5000円をYさんに献上。なにはともあれ、無事に終末の地から脱出することに成功。
砂浜に消えた13,500円


砂浜に消えた13,500円


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その後君ヶ浜・犬吠埼方面へ移動ししつこく海岸を歩くが、大きな骨は見つからない。ただ、長さは7センチほどではあるが、先に挙げたクジラの骨格標本でいえば指の骨の一部に見えなくもない骨を発見。もしこれが海獣であれば来た甲斐があったものだが、どうだろう。
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砂浜に消えた13,500円


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さて気が付けば17時に差し掛かっていたので慌てて岐路を目指したのだが、その途中銚子電鉄の終着駅である外川駅の近くをさしかかったため道草。嬉しいことにちょうど列車がやってきたので思わず長居してしまったのだが、610が2009年9月に来たときには赤と黒の電車がまだ現役で、緑の電車は確か愛媛にいたはずである。

この後、3時間近くかけてつくばに戻るのだが、ここで新たな発見。それは追記に書くとして、空腹で困窮していたYさんのリクエストで蕎麦屋で夕食を済ませ(今まで3年間通り過ぎていた2件の蕎麦屋のうち1件に入ったのだが、なかなか良い。ざるそばが610円で売っているところが素晴らしい)、段ボールを調達して帰還。出費は痛かったが、それに見合う成果と楽しい時間を過ごせたのでまあ良かったのだろう。Yさんのように延々と深い話ができる人と疎遠になるのは残念ではあるが、まあここ最近のやどけんでの濃密な活動自体が非日常の極みであったわけだから、これからまた孤独な日常に帰るだけのことである。半分集団生活の菅平で孤独になれる時間はもしかしたらないのかもしれないが…

~・~・~

さて明日はタヌキの除肉に一日を費やしそうです。明日はウサギとタヌキの処理に追われそうです。
610の部屋は現在、終誅抗議『解剖学特講』のメイン会場となっており、床にはブルーシートが、机にはレジャーシートが敷かれています。引っ越しを1週間後に控え、片づけもままらなないのにさらに部屋を散らかしてしまっております。このタヌキを処理してしまえばひとまず安泰でしょう…

610は夕飯のおかずが茹でたこんにゃくだけでも平気なのだが、これはどうしようもなくみじめな食生活らしく、Yさん曰く最低ラインを下回っているらしい。この指摘は前々からさんざん言われてきたわけだが、今日ようやくわかったことは、610は食生活の貧相さとみじめさとがオーバーラップしていないらしいことである。だから、夕飯のおかずがこんにゃくだけであったり、あるいはもやし一袋分を3分茹でただけのものであっても平気だし、そういう食事をしていても「自分は何てみじめなんだろう」と全く感じないのである。
610は食事に関して変なこだわりがあり、そのモットーは「あらゆる手間を最小限に抑える」といったところであろうか。調理をするのも片づけをするのも、最小の労力で行うことが至上命題であり、食事がおいしいかどうかは二の次である、というか検討対象に挙げられない。かつてもやしはフライパンに油を敷いて炒めていたものだが、油を利用すると片付けの時に面倒なだけでなく、鍋以外にフライパンを利用することで片付けるべき調理器具が2倍になってしまう不合理が生じる。このことに気が付いた610は、ありとあらゆるものを鍋で茹でるだけの生活を獲得したのである。
宿舎では水道代がかからないので、水はいくらでも使える。それに茹で終わった水は流しに捨てれば処理できるし、物にもよるが鍋の洗浄は水をすすぐだけで完了可能である。こんなに手間がかからずシンプルな調理方法があろうか。

こういう主張をYさんに高らかと宣言すると、もやしは炒めろ、こんにゃくはせめて一口サイズに切れ、と叱責されてしまった。
果たして610の食生活は、菅平に行ったらどうなってしまうのだろうか。もっと悪くなるかもしれない…


Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(0)
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