2013年12月16日

古典語学習者へのささやかなアドバイス

今朝は7時15分起床。部屋の片づけをしてからサテライト室に少し早く乗り込み、分子進化学IIの試験対策を行う。

2限:分子進化学II
去年の問題とそう変わりないものが出題されたのはまあいいのだが、距離法で解析をする設問に追いて、解析用のコマンドを間違って打ち続けていていつまでたってもエラーを吐かれ進めない事態が生じ、多大な時間の浪費をしてしまったのが悔やまれる。きちんと問題の文章を読まなければいけなかった…
あと悔やむべきは過去問の収集に失敗したことである。

3限:インド古典語初級B(聴講)
問題の答え合わせ。受講者が次々と脱落していく中、610はボロボロの訳を提示し続ける。結局問題量が多く最後まで終わらなかったが、610は秋Cモヂュールにこの講義を受けられない可能性があるので心残りである。専門語学(英語)CIIIが水曜日になれば継続して受講ができるし、しかも文字の練習に参加できるのだが、引き換えに昆虫学特講の「再履修」ができなくなる。担当教員に確認したところ、月曜日は定員いっぱいらしいので水曜日になるのかもしれないが、全てはそれにかかっている。

5限:ヘブル語初級b
答え合わせがすいすいと終わり、30分ほど時間を残して終わる。個人的には次のセクションの説明をしてもらってもよかったが、早く終わる分には気分が良いのでそのまま立ち去る。
古典語学習者へのささやかなアドバイス


ちなみに、残り授業はあと5回なのだが、ここにきてようやく教科書を購入。一瞥してみたが、今までもらっていたプリントバージョンの方が見やすく感じる。それはさておき、写真ではなぜかギリシャ語の教科書をも写り込んでいるわけだが、ヘブライ語の教科書はこの4大古典語の教科書の中では群を抜いて親切であることはゆるぎない。練習問題の解答こそついていないが、出典が書いてあるから自分で答えを確かめられる、すなわち独学ができるのである。
どうでもいいが、残り3つの言語について、テキストの親切さという観点で評価してみれば、ラテン語>サンスクリット≒ギリシャ語といった感じだろか。それから、ひょっとしたら学内の関係者の皆さまの中に、これらいずれかの古典語を学びたいと思う方がいるかもしれない。そこで、ギリシャ語を除いた3つの古典語について、わたしの知っている限りの情報を追記に紹介するので、興味のある方は参照されたい。

~・~・~

明日は試験がありません。が、試験勉強はしておいた方が良さそうです。

では、筑波大学で開講されている古典語の授業について、受けた印象を挙げていきます。
前もって言いますが、古典語だけではなくロシア語を第二外国語として履修する(前もってor同時に)ことをお勧めします。別にロシア語に限らなくてもいいのですが、格変化と性についての概念は古典語を受講する以前に把握しておくと古典語を学ぶ上での障壁が減ると思うからです。なお、括弧の中は(講義名、開設学類、履修年度)で、講義名の後にあるaとかbという文字は省略し、開設学類の順番は担当教員の所属学類を先頭に配置しました。複数あるのはコードシェアのためです。

下に書いたこと以外に気になることがあれば随時コメントでお知らせください。

1.ラテン語(ラテン語初級、比較文化学類・人文学類、2012年度履修)
授業の出席はたまに取る。試験の持込は付加で、成績は試験の出来が優秀であれば考慮されるが、不出来さは考慮しない。最初の方では20人位受講していて教室が変更されたが、終わりの頃には半分くらいになっていた。理系の学生もそこそこいたが、残っていたのは2~3人位だったか。授業を受けるときには孤独になることが強いられ、緊張するのだが、眠ってしまっても叱られたりするわけではない。
教科書の内容の解説が何週か続いた後、練習問題の答え合わせが行われるパターンが多かった。問題が解けなかったら先生が代わりに答えてくれることもあれば、最初から全部先生が解説することもあった。座っている席をもとにして先生にあてられ、解答をこたえる。このスタイルは他の言語でも同じ。
知識がない段階では難解に感じられるが、今思うと理解出来ていたらとても心地よい授業に感じられただろう。ラテン語から英語に派生していったものの紹介を受けたり、フランス語やドイツ語との関係性を良く紹介された。なので、フランス語を履修しているとワクワクできたかもしれない。ロシア語との関連付けは1回あったかなかったか、という感じだった。
生物系にとって大事なことは、この講義には生物系の配慮は一切ないことである。つまり、学名とか専門用語に関する余談は全くない。あくまで西洋古典学の範疇である。尤も、積極的な生物系の学生がいたり、或いは生物系の受講者が多ければ面白い話をなさってくれるかもしれないが。

2.サンスクリット(インド古典語初級、人文学類・比較文化学類、2013年春学期履修、秋学期聴講)
成績は出席と課題をやってきたかどうかで評価される。つまり、試験はない。この点で、他学類の学生にとっては敷居が低いだろう。また、他学類の参加を歓迎してくれる。初回は10人ちょい履修者がいたが、次々と消え、現在は5人前後で推移している。授業の雰囲気は良好といえよう。
始めの数回は文法項目の説明が続き、途中から練習問題が入ってくる。問題の数に応じて、答え合わせだけで終わる時と、文法項目の説明の後に行われる時がある。
610はロシア語とラテン語(+アラビア語)を学んでから履修したので格と数についてはさほど苦しまなかったが、動詞の多様な変化のパターンと複合法には大いに悩まされた。連声については練習問題を解いているうちになれてくるから心配はいらないだろう。この記事を書いている現在、文字についてはローマナイズで学習してきたため学んでいない。文字についてはおそらく中級以降でもっと積極的に親しむのだろう。また連声と動詞についてはプリントが用意される。練習問題を解くうえで何度となく参照することになるが、要点だけが載っているため非常に便利であった。先生自作の補助ツールがついてきたのはサンスクリットだけであった。
サンスクリットではラテン語以上に生物系への配慮はないが、生物学類生の履修は珍しいようで、授業に関係しないことを含めて少し話をしたりした。
個人的には、サンスクリットは英語以外のなんらかの言語を知ってから学んだ方がストレスが少なくなると思う。そして、サンスクリットを学んでからギリシャ語を学ぶのは戦略として悪くはない気がする。
あと、東洋思想とか宗教学といった科目を前もって、或いは同時に履修しておくことで、サンスクリットの背景知識を得られるだろう。これによって、練習問題に関連する余談をより楽しめるはず。

3.ヘブライ語(ヘブル語初級、人文学類、2013年度履修)
成績は試験で決まるようだが、春学期は練習問題を提出するレポートで代替された。後期は不明。履修者は当初10人程度だったが、今は4~5名で推移。ちなみに他学類の学生で生き残っているのはいまや610だけ。もともと2人しかいなかったが…
出席は取らなかったが、それをいいことに休むようであれば、最初から履修しないことをお勧めする。テキスト代とコマ数の無駄であるからだが、相当自信があればこの限りではないだろう。
文字を覚えること! 本当にこれに尽きる。初回の授業で文字を紹介され、その後しばらくは練習問題の答えを学生が黒板に書いていく方式で授業が進むが、この時にしっかり覚えておかないと後でついていけなくなる。この点、ラテン語やサンスクリットとは勝手が違う。練習問題が多くなると、文章を読んでから訳を答える方式になるが、この時に文字が読めないでまごついてしまうと時間を浪費してしまう。これは限られた授業時間を削ることに繋がり、授業で得られる知識の割合を減らすことにもなるので、要は文字を覚えなければいけない。そうは言ってもアラビア語と比べれば覚えやすいだろう。ヘブライ語には格変化はないが、人称変化が大事になってくる。これは文字で追うのもいいが音で覚えるのも効果ありだろう。
聖書の知識があると楽しめるというか、練習問題を解くのが楽かもしれないし、或いはその予備知識をもとに単語の推定ができたりして楽しいだろう。あと、身近な人の殆どが知らないであろう奇怪な言語を学んでいることでいい気分に浸れるかもしれない。人に見られるとまずいようなメモをヘブライ文字で残すことができるわけだからたまらない。
総合的にいろんな人に履修を薦めたくて仕方がない科目の一つなのだが、惜しむらくは隔年開講ということである


Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(4)
この記事へのコメント
こんにちは。
筑波大生ではありませんが、大学で古典語(ラテン語)を1ゼメスターのみ勉強していたものです。
しかし結局、ラテン語は完璧に挫折してしまいました。
その前段階として格変化と名詞の性別を残した現代語であるドイツ語に十分に親しんでから挑みましたが、やはり道半ばで蹉跌いたしました。
その原因は、やはり現在ラテン語のネイティブスピーカーがいないため、やる気を維持することが難しかったからと思います。
ドイツ語を学んでいるときは、ドイツやオーストリアの方々から大いに励ましを受けながらでしたので楽しく学習を継続できましたが、現代ではラテン語で手紙を書く機会もレポートを書く機会もないとなると、続けるのはやはり困難なように思われます。

インド古典語も古典ヘブライ語も既にネイティブスピーカーが絶滅しておりますが、Impulse610さんはどのようにやる気を維持しておりますか?
もしよろしければお聞かせ頂けると幸いです。

ちなみに現在はポーランド語を学習しておりますが、ロシア語も含めスラブ語派の言語は、ラテン語の色彩を色濃く残しているので知識階層の人間になれたような気分に浸れますね。(このようなことを書くと世俗アレルギーなImpulse610様からは「そのような下賎な世俗根性でスラブ語をやるな」と言われてしまいそうですが。)

それでは失礼いたします。引き続き古典語の学習、がんばってください。
Posted by Kartoffel at 2014年01月16日 16:17
Kartoffel さん

はじめまして。

実は本日コメントに返信したのですが、書込みが反映されず、データも消えてしまいました。
申し訳ありませんがのちほど改めてコメントします。もうしばらくお待ちください。
Posted by Impulse610Impulse610 at 2014年01月17日 20:00
Kartoffel さん

私は古典語を学習するとき、ネイティブがいないことについては全く気にすることがありませんでした。そもそも「古典語は読めればよい」と考えている節があるのと、会話や発音より文字に興味があったので、私にとってネイティブがいないことはマイナスではありませんでした。

それで、どうやって学習のモチベーションを維持しているのかというと、おそらく「授業に出席すること」が最も重要なようです。
私は独学をやるような根性と力量に欠けているので、特に予備知識がない段階では、誰かから教わらないと学び始める土俵にすら立つことができません(それを端的に表しているのが、図書館でアイスランド語とアムハラ語の資料を借りては読まずに返却する作業を何度も繰り返している事実です)。
また、古典語の教科書には練習問題の解答が無いものも多く、それが分からないままでいるのは不安ですし、分からない状態が続くと意欲も落ちてきます。
授業に行けば、丁寧かいい加減かはともかく文法や解答を教えてもらえる―当然できる範囲での予復習あっての話ですが―し、何より授業に参加することで学習機会を強制的に作り出す必要が出るので、初歩の段階では大事だろうなあと思っています。

ポーランド語の学習をなさっているのですか。素晴らしいことだと思います。
ちなみに私がロシア語を学びたいと思うようになった起源は、言語的な古めかしさではなく、地図帳に載っているケッペンの気候区分のページであり、千島列島沖にある千島・カムチャツカ海溝の濃い色彩です。意味不明ですよね…

コメント有難うございました。
この先古典語の学習まで気が回るか分かりませんが、今やっている古典ヘブライ語の継続を目指したいところです。
Posted by Impulse610Impulse610 at 2014年01月17日 20:40
Impulse610さん

非常に丁重且つ迅速なご返信をありがとうございます!
返信コメントがまさに一編のエッセイの様で、とても楽しく読ませて頂きました。
ケッペンの気候区分に対するImpulse610さんのご興味を理解することは、残念ながら現在の私には難儀なことと思われますが、文字に対する興味という点では非常によく理解できます。
中学、高校と強制的に慣れ親しまされてきた英語とは全く違う姿形と配列の秩序を持った異言語に対する興味は尽きないものですよね。
ちなみにアムハラ語という言語を、こちらのコメント欄にて初めて耳にしました。

Impulse610さんは非常に広範な分野に対して尽きない好奇心を持ったお方のようですので、blogの内容が変化に富み、時に柔軟に、時に頑迷に綴られた文章がとても面白いです。
古典ヘブライ語の継続と共に、blogの更新も末永く継続なさることをお祈りしております。

懇切丁寧なご返信、まことにありがとうございました。
またコメントさせて頂く機会もあると思いますが、そのときはどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by Kartoffel at 2014年01月17日 23:56
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