2012年04月15日

新入生のいない新歓活動

5:30起床。かなり寒いのだが、外は晴れているようで観察はできることだろう。
ムカシトンボの形跡を求めるべく、やどけんの下見も兼ねて宝篋山へ向かう。朝もやが何とも言えず幻想的である。
新入生のいない新歓活動


私が知りえる範囲では、ムカシトンボのいそうな沢は2つあり、よく行く方は植林帯直下にあるために終始薄暗い。今しがた向かっている方は一瞬ギャップがあり、しかも平坦で非常に観察がしやすい。この前どうしてここに行かなかったか若干後悔していたのだが、そう思いつつ幼虫がいないか、抜け殻が無いか探してみる。
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一休みしているガガンボを起こさないよう、注意深く沢沿いの斜面を見やるのだが、いかんせん感覚がよく分からない。しかし見つかるときには随分はっきりとそのものが見えてくるのは不思議なことだ。
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とにもかくにも、ひっくり返っているヤゴが視界に入った! これは羽化不全かと懸念したが、つまんでみると殻。一昨日以前にすでに羽化は始まっていたようだ。ああ、もっと早くこっちの沢の存在を思い出していれば! とひたすら後悔に暮れるのだが、ここであきらめてはいけない。昨日の雨の影響で羽化を見合わせた幼虫もどこかに潜んでいるかもしれない。
その後、2つの抜け殻を追加で確認。後に写真で環境をお示しするが、普通のヤゴと比べて随分水辺から遠ざかっている場所にあった。幼虫は羽化をおよそ1か月後に控えると上陸して落葉の下などでじっとしているそうだが、どうしてそうしたのだろう。そして、それがなぜ他のトンボたちに受け継がれなかったのだろう。

8時半ごろ引き揚げ、一旦帰宅。やどけんに行く準備を整え、共用棟前にて新入生を待つ。例によって上下水色の作業着に身を包み、青色の補虫網、腕章をつけているとそれだけで宣伝効果は絶大なはずなのだが、ここにいる新入生のほぼ全員がテニサーに流れていく。それをGen君とただただ呆然と眺めているわけだが、数少ない入部希望の1年生はほぼ全員が生物学類で、今日は学類の新歓でどこかへ合宿に出かけてしまっている。他学類の生き物好きはどうしたことだろう。まあ、他の新歓活動に参加している可能性もあるわけだが、このままではあまりよろしくない。
結局1時間程度過ごして、新入生ゼロのまま宝篋山へ向かうことに。

ここでantの前輪がパンク。610の頭の中もパンクしてしばらくあたふた。結局部屋に戻って修理をし、現地で合流することになったのだが、腹を切ってしまいたいほどやるせない。自転車の管理が悪いこと、人を待たせること、観察時間が減ってしまうこと・・・新入生がいなくてよかったというのは変な思いだ。数多くパンクしているチューブは毎回別の場所に裂け目ができており、修理の技術そのものが原因ではないらしい。それよりもタイヤがズタズタで、空気を入れてパンパンになったチューブがはみ出ている場所がある。通常の26インチの自転車と違って小径な14inchのタイヤでは同じ距離を走ってもタイヤのすり減り方はだいぶ違うはず、もうかれこれ購入5年目になるのだから、いい加減買え時かもしれない。
やどけんメンバーが宝篋山へ行く際は車を使うことが多いのだが、今回はそれが用意できないということで自転車で向かうことになった。ところが自転車で頻繁に宝篋山を訪れるのは610くらいのもので、ルートを熟知している人がいない中、私だけ離脱して他のメンバーがナビを頼りに先に行ってしまった。こういう所で当然起こるのが待ち合わせ場所の不一致で、610の知っている小田十字路には誰もいなかった。もう先に宝篋山入りしているのかと思って駐輪しに行ってもいない。こんな時にパンクなどしている場合ではなかったのだ…

なんだかんだあって、集合時刻からおよそ2時間経過して宝篋山入り。残り時間が少ない中、610はやどけんご用達のフィールドへ、ムカシトンボの居場所へと気持ちがはやるのだが、他の人は今日初めてここに来たのである。ツカツカ行きたい気持ちを抑えてのんびり辺りを見回すと、先ほどは気付かなかったものも見えてくる。
新入生のいない新歓活動


向かいの尾根筋はサクラが賑やかだ。

予定ではやどけんフィールドに行ってからムカシトンボの羽化柄を見てもらい、そしてミヤマセセリのポイントへ向かおうと考えていたが、これをやろうとするのは難しそうだ。だから、どこからかミヤマがふっと飛んできてくれたらなあと思っているところ、Tateさんがその姿を発見したのであった。
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枯れ枝を処理しきれず残念な出来になってしまったが、ひとまず撮影に成功。ここにはほかにも数頭飛び交っていたので、今回の目標は簡単に達成。
それからやどけんフィールドにてガサゴソ網入れを行っているメンバーから離れ、一人ムカシトンボ探しへ出向く。
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こんな感じの、陽の当たる沢沿いの斜面で羽化を行うようだ。随分目立ちやすい気もするのだが、こんなところで羽化して鳥に食われたりしないのだろうか。ただ、610の目を欺くのはたやすいようで、羽化場所の感覚は分かったのは良いがなかなか追加が見つけられない。

そして、またしても見えるときにはそこに吸い寄せられるのであった。
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!!

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ムカシトンボだ!!

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これが見たかった!
心臓が高鳴り、冷静な気分ではいられなくなってくる。追い求めていた虫を見つけ出した時―それは一人の時に限るのだが―この何とも言えない達成感を得られる。これが3億年近い太古の昔から綿々と受け継がれてきた「通過儀礼」なのである。朝の下見の時には発見できず、しかも到着がだいぶ遅れたために羽化の最中こそ見損ねてしまったが、こうして今年も成虫が生まれてきたのだと思うと非常に感慨深い。
ある程度写真を撮ってからやどけんメンバーに知らせに向かう。Gen君がタイコウチを捕獲している最中で、今まで何度かここにきている610はこいつを見落としていたことに未熟さを覚えずにはいられない。610は水生昆虫に弱いのだ。当初の予定ではムカシトンボ観察は候補にすら上げてなかったのだが、今回の思わずサプライズにやどけんメンバーも満足していただけたのなら、パンクでこじらせた610としてはせめてもの罪滅ぼしにしていただきたい。パンクさえなければ「新入生が来てくれたらいいもの見せてあげられたのに!」となったのだけれど・・・
ただ、こいつ、羽化が随分遅いような気がする。午前中には羽化を終え、そろそろ体も硬くなってきていいころだと思うのだが、これがムカシトンボのデフォルトなのか、それとも個体差なのか…
この沢でガサ入れをしていたGen君がムカシトンボのヤゴを発見。610も今まで何度か探して尽く失敗していたのだが、さすが水生昆虫屋、水の中の見え方が私と全然違うのだろう。
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捕まえると腹部のヤスリに脚をこすり付けて「鳴く」らしいのだが、擬死を解いてくれない限りその声に耳を澄ますことはできない。この性質もまた他のトンボ類には受け継がれていないはずだ。

そんなこんなで15時前に撤収。個人的にはムカシトンボが見つかっていなければパンクの自責感で沈んでしまっていたことだろう。なので手放しでは喜べないのだが、とにかく羽化直後の成虫を見つけられて良かった…

~・~・~

今週水曜日は健康診断のため、今年度のムカシトンボ羽化観察はできない可能性が高いです。早くも来年の課題ができてしまいました。
ただ、今日観察した羽化個体は一晩とどまっている可能性が高いとみています。明日は1限から授業があり、科目の特性上休むわけにはいきません。ですが、そんなことで観察を放棄できるわけがなく、朝5時半ごろに様子見に行ってこようと考えています。それから授業へ…ロシア語会話、どうなることやら・・・



Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(2)
この記事へのコメント
お、流石だね610君!素晴らしい。
次回は定位しているところから観察できるといいね。
Posted by kojeee at 2012年04月15日 19:19
>kojeee さん
ありがとうございます。これで生息環境のイメージはできたと思います。
最初から最後までじっくり観察したいのですが、スケジュール上あと1年辛抱することになりそうです…
Posted by Impulse610Impulse610 at 2012年04月16日 20:02
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