2014年05月11日

カワゲラに隷属するための滝見

寮のすぐ横には小規模な小川が流れており、日夜610を監視するネモウリーデ部隊が1年に及ぶ厳しい鍛錬を行っている。


センターに向かう前に寮の外周を一回りしてみたところ、いるわいるわ。彼らも610の人生を支配するのにかなりの労力を割いているようだ。610の管理が悪いからなのか、オナシカワゲラはやたらに採集できる割りには全然産卵してくれない。こんなに採集できても1卵塊しか得られないかもしれない。でも、卵を産んでくれることに期待したい。

今朝は7時半起床、9時出発。11時から2時間ほどセンター内でカワゲラ探し。


出発する直前、建物の窓から外を見やるとエサを漁っているキジを発見。のんきである。


外に出て撮影したり、わざと駆け寄って逃げていくところを動画に収めたりしている最中、反対側にアカゲラが登場。2週間くらい前だったか、ドラミングの音を認識して一人で沸き立っていたのだが、そういえば最近聞かない。その代わり日暮れ時に鳥の鳴き声がすごい騒ぎになってそれはそれで面白いのだが。


沢に向かう道を歩いているとトラフシジミが降ってきた。降ってきたというのは比喩ではなく、飛ぶのが下手くそで飛んでいるようには見えなかったのである。それが証拠に、この後610の顔に正面衝突した。


菅平でも雪はほぼ消え、わずかに日陰に残る程度になってきた。そのため沢の水量も減ってきた。


なぜだかわからないのだが、滝の周り、水しぶきと風が激しいあたりにはカワゲラがたくさんいる。しかしここから僅かでも離れると密度ががくんと下がり、全然見つからないと言い切ってしまえるぐらいである。探す方にとっては習性が分かりつつあるので効率の良い採集ができるメリットがあるが、いい迷惑である。カワゲラに支配される人生を歩み始めなければ、こんな苦行を強いられることもなかっただろう。これが真夏で暑いところなら極楽だろうが、忘れることなかれ、ここは菅平である。今朝も最低気温が氷点下に達している寒いところなのである。レインコートを持参した方がいいのだが、荷物がかさむのもまた面倒…
ちなみにこの写真のカワゲラはParaleuctraというホソカワゲラ科の一種で、昔の調査では存在しないことになっているグループに所属している。要するに菅平での新発見である。もちろん、自分が新発見をしたことを自慢したいわけでも何でもないし、そもそもこの程度のことは自慢に値する発見ではない。最低でも同定を終え紀要か何かで報告を行わなければ意味の無い行いとなってしまう。とにかく、つい先日まで菅平ではいないことになっていたグループが簡単に見つかるようになり、実験材料を集めるという観点において非常にありがたいことである。

実験室に戻る途中、上空からきれいな鳥のさえずりが聞こえてきた。運が良ければ声の主を見つけ出せそうだったのでしばらく粘っていたところ、見慣れない鳥が現れた。黒っぽくて、お腹は真っ白…黒? いや、この配色から考えると、黒ではなくて青であってほしいのだが…


青い! オオルリ!! やったぞ日本三鳴鳥!!!





双眼鏡を使ってばっちり観察でき、しかも撮影(レンズの先を双眼鏡に当てる)も珍しくうまくいき、610は幸せの青い鳥を誰にも邪魔されずに観察できるという幸せなひと時を過ごすことができた。オオルリは筑波山で観察できるようで、恐らく宝篋山でもいると思うのだが、今まで夏鳥は無視していたことがとても悔やまれる。しかしファーストコンタクトとしてはこれ以上に無い恵まれた環境であった。
ちなみにこの後、ノスリがカラスにちょっかいを出されている場面の観察に成功。


一旦センターに戻りお昼を摂ってから次の目的地へ移動。すぐ近くにある唐沢の滝という名瀑で、こちらは国道沿いにあり誰でもアクセスできる。前々から気になっていたので、K君に車出しをお願いして捨ててもらい訪問。経験則をもとに、わき目も振らず滝壺に急ぐ。


我らが大明神の滝よりも幅が広いだけあり、水しぶきと風の量はとんでもない。しかしカワゲラは苦行する610をあざ笑うかのごとくたくさん石にへばりついている。しかし実際に610をあざ笑っていたのは、恐らく滝を背景に記念写真を撮っているお兄さんたちだっただろう。滝のそばで吸虫管というわけの分からない装置をもって岩を見つめて、或いは吸虫管を口にくわえて何かを吸っているしぐさを見て、どう思ったことだろう。

写真の黄色いカワゲラはミドリカワゲラ科で、成虫を見るのは初めてである。どことなく羽化して間もない印象を受けるが、それは体色に由来するであろう誤解である。そのほか、菅平で記録が無かったもう1つのグループであるシタカワゲラ科の成虫を発見。これによって、日本に産するカワゲラ全9科が徒歩圏内で採集できる目途が立ってしまった




センター内でもそうだが、沢にいるとよくキセキレイと遭遇する。これは宝篋山では1度しか体験していないのでなかなか新鮮である。


少し場所を移動。すると砂地に足跡らしきものを発見。参考までに右側に自分の足跡をつけてみたのだが・・・これはクマか、それともヒトのこどもか・・・個人的にはクマであってほしいのだが、ちょっと状態が悪く自信を持って判断できない。


やはりここでも滝を離れると全然カワゲラが見当たらない。彼らは610に滝めぐりの苦行を強いたくてたまらないのだろう。

この後歩いてのんびりセンターに戻っていったのだが、途中ヤマガラ、アオジ、ホオジロ、キジ(ペア)などを目撃。カワゲラもそこそこいたが、鳥もなかなか豊富であった。

~・~・~

流石に2箇所も巡ると疲れますね。本日は早く切り上げたので、早く寝て体力の回復に努めたいです。

明日は何とドイツから研究者がやってきます。1年間菅平に滞在していろいろやるそうです。ドイツ語に興味関心が湧かなかったつくば時代の自分が残念です。
  


Posted by Impulse610 at 18:10Comments(2)