2014年10月15日

カワゲラもロードキルも供給過多な人生

今朝は7時起床、8時ごろ出発。午前中はミネトワダの様子見と採卵、固定卵の処理で過ぎ去っていった。やはり効率的な採卵方法を確立する必要があるなあ。午後は論文紹介のリベンジ用資料作りとミネトワダ卵の固定を行い、英会話に参加。その際に先生からロードキル情報を得たので、レッスンが終わったら何もかも投げ打って現場に急行。先日タヌキを拾った場所のすぐ近くでまたもやタヌキが斃れていた。下顎骨が真ん中で割れてしまっていたが頭蓋骨はしっかりしていたので頭骨標本が作れると判断、有無を言わさずセンターに持ち帰る。作業のめどをつけてから夕食とカワゲラの様子見を済ませ、万全な状態で頭の取り出しにかかる。

前回同様小柄なタヌキであり、非力な610でも片手でらくらく運べるくらいである。前途有望な若い個体が同じ場所で立て続けに死んでしまうのは不幸なことであるが・・・もしかしたらロードキルが直接の死因ではないのかもしれないなあ・・・ さて今回は頭骨を得ることに目的を絞り、首から剥皮し他の部位は無視することにした。もちろん全身の状態が極めて良好な個体だけあり、全身骨格標本にしたい気持ち・筋肉や内臓を観察したい気持ちがあるのだが、勘違いしてはいけない、私はカワゲラの奴隷である。骨いじりや解剖が趣味的であっても、本業をないがしろにするような過度の没頭は許されることではない。それに論文紹介の準備もあるし、トワダカワゲラは重厚な隷属を強いてくるし、3月に解剖したウサギとタヌキの処理もしないといけないし・・・うむ、人生どこかで諦めをつけなければいけないのである。

前回上田に降りたとき、解剖用の片手鍋(IH対応)を購入した。菅平ではガスボンベを利用できないことはないのだが、おもに外部の宿泊者が食事の際に使うものであり、調理が目的でない私的な趣味のために使うのは躊躇われる。何より獣の骨を煮たガスボンベという存在は、多少の理解がある土地柄とはいえ人倫に反するであろう。なので自分のIHクッキングヒーターで自由に骨を煮るためのツールが必須であったのだ。前述のように頭骨標本で済ませることも多いだろうし、何かと活躍するだろう。

さてタヌキの頭骨を煮るついでに、先日解剖したアナグマの頭も一緒に処理しようと思ったのがすべての元凶であった。これは取り出して水に浸けて放置していたのだが、それがパンドラの箱であった。解剖により目に見える像や鼻につくにおいに慣れている610をして「これはまずい」と思わしめる程度に激しい状態になっていたのだ。体制の無い人が居合わせたらトラウマになること必須の、耐え難い状況であったろう。しかし610は開けてしまった以上処理する義務がある。邪悪な内容物を外に捨てたのはいいが視覚・嗅覚的問題をクリアできたどころか悪化させてしまい、鍋に放り込んでからも動物が本気で腐ったにおいが室内に充満してしまい為す術のない状況に陥ってしまった。

だがこんな人生の中にも救いがあるもので、外に出て邪悪な煮汁を捨ててみたところ大変美しいアナグマの頭骨が露わになったのだ。今までの除肉方法で苦戦していた堅い筋や入り組んだ筋肉の大半が見事に消え去ったのだ。犠牲が大きい分得るものも大きいことが分かったのは収獲である。水に浸ける前に出来る限り除肉すれば激しさも大分和らぐだろう。
この教訓を胸にタヌキの除肉を行えばいいのだが、いまいちやる気が湧かない。胸に入っている教訓が何だか疑問になるところだが、パイプ洗浄剤を投入する化学的処理を行えばいいじゃないかと思い立ったのである。最中は塩素のにおいが立ち込めるが硫化水素に満ちた腐敗臭よりかはましであろうし、化学編成を受けた肉の色からはグロテスクさが減衰するように思う。これはいくらでも浸けておける水とは対照的に数日で引き上げる必要があることを気を付けねばならないが、水を交換するだけでも充分だろうから忘れたりしなければ大丈夫だろう。
アナグマは歯が大分抜け落ちてしまったがすべて回収。歯がすべてそろっていて、しかもほかの破損も欠失もない完璧な頭骨標本を得るのはこれが初めてである。タヌキも歯が揃っているようだし、きれいな標本にしたいところである。22時20分帰寮。

~・~・~

明日はひとまずアナグマの腐敗臭が消えているのか確認するのとタヌキの埋葬をする必要があります。それが済んだらカワゲラに隷属です。

昨晩素晴らしい図説を発見しました。ご存知の方もいるかもしれませんが紹介します。

近代デジタルライブラリー - 日本動物解剖図説

初版本は皇紀2600年を記念して上梓されたようで時代を感じますが、中身はかなりしっかりしているように思えます。私はあまり解剖図の比較をしたことが無いので何とも言えませんが、基本的な分類群を網羅していて、かつ多くの部位が同定されているのでクオリティは高いと思います。少なくとも、この本をマスターできれば動物の形態・解剖学的知見が飛躍的に向上するだろうし、系統学的なセンスも磨けるように思います。私も精進していきたいです(本を買ってしまうつもりです)。

それにしても、こんな本が無料で閲覧できるなんてとても素晴らしいことだと思います。70年以上前の本なんて古い感じもしますが、そこから今現在の人生に応用できる知識を発掘できるのだと思うとワクワクします。願わくばつくばにいた頃にこの存在を知っていたかったものです(そしてその頃に解剖に対する興味がもっと高ければ・・・)。

ヌタウナギが教えてくれる 脊椎動物の進化 | 著者インタビュー | Nature ダイジェスト | Nature Publishing Group
そしてついでに、形態学とか解剖学という古臭そうな学問をないがしろにしていていいのだろうかという問題提起も兼ねて。こういうバックグラウンドは時代の最先端を走る人たちにはしばしば役に立たないものだと思われる節があるようですが、彼らには見えないものが見えることの強みというものが伺えます。


Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(0)
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