2014年09月06日

山頂から自宅を探す楽しさ

9月5日
蛍光観察をしたり、卵の固定をしたりする。49歳のピッチャーが先発出場したプロ野球の試合が気になり、夜はオフィスでグダグダと過ごす。

9月6日
6時半起床、7時過ぎに出発。センターで支度をしてから菅平牧場に向かい、4度目の根子岳登山を開始。展望台へ続く最初ののぼりで飛ばし過ぎて心臓と頭を痛め、以降樹林帯を抜けるまで苦行が続く。調子に乗って飛ばし過ぎると必ずその負担がのしかかってくるという人生の真理の一つを垣間見たような気がする。
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さてなぜ突然の根子岳登山を行ったのかというと、このチョウ、ベニヒカゲの観察をしたくてたまらなかったからである。ベニヒカゲはミヤマモンキチョウと同じく高山蝶の一であり、長野県では天然記念物扱いされており採集が禁止されている(北海道にも分布しており、そちらでは広範に見られるようで、採集も可能である)。こいつら、なかなかすばしっこくて敏感なうえに訪花もあまりしないようで、なかなかきれいな写真を撮らせてくれない。
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クジャクチョウみたいに、花の上で翅を広げてのんびりしている様を、できれば麓の菅平が写り込むようなアングルで撮影したいものだが・・・
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ベニヒカゲたちはあまり花に来ない代わりに、610の不潔な作業ズボン、靴、あるいはリュックやカメラの紐に舞い降りた。どうやらそういう所に高密度で存在する汚染物質に誘引されたようである。まあ一言でいえば汗を吸いに来たわけであるが、地面やササにいるときの敏捷さはどこへ行ったのかと思いたくなるほど熱心に口吻を伸ばして動かない。
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汗を吸う性質を利用すれば、一生懸命ズボンの上で吸水しているベニヒカゲを指の上に誘導することも容易い。こうして本来の望みとは若干ずれてしまったものの、菅平を背景にして好きなだけ撮影することに成功。この点、ミヤマモンキチョウより観察がしやすい。
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彼らは一度汗を吸いだすと微動だにせず、ちょっとくらい息を吹きかけたり指で動かししても一心不乱に口吻を伸ばし続けている。ひょっとしたらこのまま頂上まで連れて行けるかもしれないと不毛な登頂に挑んでみたのだが、山頂に着く直前でお腹いっぱいになったらしくどこかへ飛び去ってしまった。まあこうして、誤解を産みそうな写真の撮影に成功したので悔いはない(高山蝶パトロールのアルバイトをするような人間がこっそり高山蝶を採集していたらその人の人間性は疑われるわけだが、残念なことに610はそこまで落ちぶれていない。というか採集グッズの一切を持っていないので捕まえたとしても保管ができないし、本当に採集したかったら北海道に行けばいいだけのことである)。
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手乗りでない自然状態の撮影は、雲海を眺めている様子を捉えるので精いっぱいであった。ただ、訪花個体を撮影できたのはよかった。今回は鳥見も兼ねてGXRだけでなくPENTAX X-5も持参したのだが、これが大当たり。敏感で近寄れないベニヒカゲを遠くから撮影できた(ちなみに鳥は全然ダメ。ホシガラスを見たかったが気配すら感じられなかった。時期が悪いのだろうか…)。
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さて本日、午前中は空気が澄んでおり、アルプスの山々だけでなく富士山をも眺められ、天空の絶景を堪能することができた。菅平に移住したことにより、こういう天気の良い時にだけ山を登るというぜいたくもできるのだな、と悟る。
今まで3回の登山では迂闊にも双眼鏡を持ってこなかったのだが、今回は持参。山頂からでもセンターの大明神寮や我々が住まう寮がはっきりと確認でき、標高2000メートル級の山頂から自分の居住地が確認できるなんてそうそう経験できることではないだろうから、なかなか愉快であった。

さて下山を始めてほどなくして、2人の登山客と行き違う。その際に上田市職員と誤認されてしまい、すぐにそうではない旨を告げたものの、根子岳の景観に対する要望を聞かされてしまった。曰く、昔は花がたくさん咲いていたのに今はササばっかり、役所の方にササ刈りをしてもらいたいとのことであった。ここで高山蝶パトロールのあれこれを持ち出すと面倒かなと思いそのことは黙っておきながらも、昔は山頂まで放牧されていたからササもなく花がたくさん咲いていたということをお伝えし、ベニヒカゲをぜひ探してみてくださいと謎のアピールをして立ち去った。うーむ、どうして私はこう、ホームセンターの従業員とか市の職員といった人物像で解釈されてしまうのだろう。実際はただのカワゲラの奴隷なんだけどなあ…

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キベリタテハ。近寄ったらものすごい勢いで飛んで行ってしまったが、たいそう美麗であった。クジャクチョウの派手派手しさとは対極の落ち着き払った色合いにファンも多いのだが、610は観察経験に乏しい。ぜひ採集してみたいチョウの一である。
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キタテハではなくシータテハ。翅が強くえぐれているように見えるのと、裏にcのアルファベットのような模様があるのだが、この写真ではどちらも分からない。幼虫は先週沢沿いで見つけて採集し、今は蛹となっているのだが成虫は初見。もうちょっと翅の切れ込みが強い個体を見てみたい。
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写真の〆はオオセンチコガネ。太陽光の下で見ると赤紫色に輝き、まるで宝石が動き回っているようにも思えるのだが、写真でとるとただのセンチコガネよりも汚らしくなってしまう。

4時間程度の根子岳登山を終了し、ベニヒカゲウをはじめとする多くの昆虫類を観察できて気分が良かったので牧場のソフトクリームを頂く。その後寮に戻って一休みし、センターに戻ってブログを書いてから昨日固定した卵の処理をする。学生も教職員もほとんどいないとどうにもやる気が出ず大した作業ができないが、610の場合は基本的に月月火水木金金で研究室に滞在しているので、こういう日の怠惰ぶりを問題視するのはかえって危険なことかもしれない。ならばオオルリの処理をとも思ったが、これは作業が未知の領域なので、そっと冷凍庫に仕舞ったままにしておくのがよろしい。

~・~・~

というわけで本日は久々の写真付き長文ブログをお送りしました。
そろそろマダラヤンマの撮影にも行ってみたいものですが、それは来週のお楽しみにとっておきます。明日はいつものように買い物をしてからカワゲラに隷属です。余裕があればオオルリの羽むしりもしたいところ・・・



Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(0)
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