2013年04月01日

冷蔵庫を一人で4階まで運べるか

今朝は7時半起床、9時に入居受付を済まして新居のカギを手に入れ、ここからおよそ7時間、新居と旧居を往復すること約30回にて、全ての荷物を新居に運び込む作業を完了する。最も難航を極めた冷蔵庫は、上下2つの扉を取り外すことによって軽量化を図り、およそ30分の移動時間をかけて無事に搬入に成功。

さて引越し先の新居であるが、当初は二人部屋と聞いててっきり二つの部屋があるものだと思っていた。そのため、一つの部屋を展示室状態にしようかともくろんでいたのだが・・・実際に入り込んでみると、そこは確かに二部屋あった。ただ、一つの部屋は厠と物置が併設された薄暗い場所であり、610の構想は引越しを始める前に崩壊。
それはそれで仕方のないことだが、目の前にあるのは一人暮らしをするのにはあまりに広すぎる部屋。真っ先に脳裏をよぎるのは「寒さ」。暖房が機能しないこの時期、こんな部屋で寝かされては耐えられないのでは…おまけに、この部屋には学生宿舎から寝具の提供がないとのことである。610の手元にあるのは毛布が一枚…これはすなわち死を意味する。実際、この夜は寒さで寝付けなかったのであった。
ただ、新居のコインシャワーは旧居のものより高性能で、とても暖かかった。これは冬場でも充分使えるだろう。

~・~・~

旅行から帰ってきて殆ど報告できていない「大東避行」であるが、せっかくなのでここでちょっとしたエピソードを紹介しておこう。

610は大東諸島にいた時、北大東島で2日ほど宿無しの状態を経験した。1日目は純粋に宿が取れなかったのだが、2日目は那覇へ戻る船が出港延期になったためである。幸いにも2日とも好天に恵まれ、さらに雨風をしのげる建物があったため大した苦労はせずに済んだのだが、日中は基本的にやることが無い。
そこで、ダイトウヒメハルゼミを探しに目星をつけた場所へ歩いて行くのだが、道中ある旅行者に声をかけられた。以上のことを説明すると、彼女もせっかくだからご一緒したいとのこと。まあ、来ないでくださいなんて言えないし、そもそも断る理由もなかったのだが、610が言うのも変だが、彼女には「変人」の空気が漂っている。結構暖かいのに長袖長ズボンで、それでもなぜか足元はサンダル。胸元まである長い髪は背中に一つに束ねられている彼女は、610と同じように―わたしは、頭皮を守るためだが―手ぬぐいを被っていて、やたらに古めかしいカメラを2機も(!)持っているのだ。

610は基本的に、誰かに対して身の上を質問することは稀である。今回も例によって何も聞かなかったのだが、彼女の方が自分からいろいろ話してくれた。青森出身で、2浪してある大学の文学部に合格し、思想の勉強を始めたのだが色々あって1年後に休学をして今に至っているという。ということは610と同年代らしい。
彼女は、610以上に孤独を愛しているらしく、大学・高校時代に友達と言える存在は一人もいなかったという。自分の考えを持たず、流行に流されていくだけの人が大嫌いだといい、彼女の身の回りにはそんな人たちばかりがいたらしい。でも、中島義道のように(!)自己表現ができる訳でもなく、最低限度の関わりを持った高校時代を過ごしてきたという。高校時代から山のように本を読んできたが、浪人時代もその量が衰えることが無かったらしい。そのため2浪することになったが、結果として今の自分があるのだから後悔はしていないという。
だが、せっかく苦労して入った大学で出会った学生たちは、確かに優秀かもしれないが、彼女が思っていた以上に「からっぽ」の人が多かったようで、そんな彼らと同じ立場にあることが嫌で嫌で仕方がないという。夏休みを過ぎたころから、髪を染めたりビッグフレームというでかいメガネをかける同期が増えていったことは彼女の理解の範疇を超えていたらしい。ここまでは610も強く賛同できる―実際、年の近い若者がどうしてこうも同じような姿恰好をしているのだろうか分からぬ―が、圧巻なのはここから。

彼女は、このような危険思想とは裏腹に端正な顔立ちをしている(もちろん、化粧なんてしたことが無いと仰っていたが)。それが原因だと本人は思っていないようだが、内実を知らぬ考えの浅い男どもから何度か見え透いたお誘いを受けたらしい。なかでも、大学生になってようやく携帯電話(スマートフォンは拒否したらしい)を持ち始めたのだが、入学早々のオリエンテーションや同じ学部の集まり等でメールアドレスを交換した男子学生からたびたびメールをもらうようになったという。その人は一目見た時から「近寄りたくもない」見た目をしていたとのことだが、だんだん個人的なことを聞き出すようになってきたという。「今何してるの?」「どこにいるの?」といった幼稚なものから、「○○の授業って取ってる?」「明日の○○って休講だよね?」といったメールで聞く意味も無いようなことを、毎日のように送ってきた。こういうのは適当に答えたが、「○○のあと昼ごはん一緒に食べない?」とか「ちょっと聞きたいことがあるから図書館に来てもらえる?」というものもあって、これらは適当にでっち上げて何とか会わないようにしたらしい。それからもいろいろとメールが来て、しまいには好意をほのめかすものもあったそう。あまり詳しくは教えてくれなかったが、結局最後に怒りを抑えつつも激しい長文を送り付け、すべての元凶となったケータイは川へ投げ捨てて解約してしまったらしい。

610は、どことなく自分と似た考えを持っている彼女に共感を覚えつつも、どうしてこんなことを語ってくるのか疑問を抱いていた。ひとが嫌いならこういったことを誰かに伝える必要なんてないのでは…
「あなたには、何かオーラというか、只者ならぬ雰囲気を感じるのです」と突然言い放ったのには、まあ仰天とまではいかないが意外な切り出しに驚かされた。旅行中610はメガネが落ちないよう紐をつけていたのだが、彼女はメガネチェーンを付けた若い人を生まれて初めて見たらしく―ちなみに、610も未だかつてメガネチェーンを付けた若者を見たことが無い―それがこの辺境の島だったからある種の確信を抱いたのだという。彼女の洞察はまあまちがっているまい(´Д`) 610もそれなりに自分の考えを話したのだが、こんな出会いがあるものだとはつゆほども思っていなかったために変な感じがする。

さて、結局ヒメハルゼミは見つからなかったので610は野宿の場所へと戻ることにするが、その内実を話したところ流石の彼女も驚いてしまった。旅行の経験があまり無いようで、ネットカフェや高速バスで移動費・宿泊費を浮かせるという手法も知らなかったらしい(もちろん彼女は飛行機でやってきた)。興味深いそうでこちらにもついてきてしまったのだが、610の昆虫のストックに目が釘付け。
彼女の実家は山や田んぼに囲まれた田舎で、小さいころから生き物に慣れ親しんだという。また彼女はスケッチが得意で、小学校の自由研究には虫の標本とスケッチを出したり、受験勉強の息抜きに、散歩で見つけた虫やカエルを家に持ち帰っては眺めまわしたりスケッチをしていたらしい。実際スケッチブックを見せてもらったが、羨ましいばかりの腕前である。
ダイトウオオコウモリは観察したか聞いてみたところ、まだとのこと。孤独は好きでも、一人で暗い中歩くのは苦手らしい。ということで、夜になったら一緒に探しに行くことにして、海を見ながらいろいろな話をする。

彼女は周りの学生達に失望して休学したなどと先ほど言っていたのだが、どうやら休学の原因はこれだけではないらしい。
将来設計にひどく悩んでいるようで、自分が就職などできるわけないが、だからと言って研究の道に進んでも先が見えない。そもそも自分がやりたいのは思想というより文学的な研究なのではないのか、ただどちらにしても一寸先は闇。こんなことを考えながら学生生活が送れるとは思えなかったので休学を申し込んだのだが、あっという間に1年が過ぎてしまった。考えは全然まとまらないままここまで来てしまったが、このままだともう1年休学しないとダメだろう。けれども、最後の決断を下す前に少し心に安らぎを得たい。休学中、図書館でアルバイトをしていたので、そのお金をはたいて北大東に来て今にいたるのだという。
いやはや、何とも生きていくのが大変そうである。実際言葉の端々に悲壮さがにじみ出ているのだが、その中にもまだ一縷の希望を抱き続けているようで、その語る表情は何とも凛としている。だが、自分を育ててくれた親のことになると一転、涙を流し始めた。こんな自分を育ててきてくれた両親にはとても申し訳ない気持ちでいっぱいだという。610はどうフォローすればいいのか分かるわけもなく何も話せなかったのだが、そんな中、大粒の涙を目にたたえる彼女の美しさに心を射抜かれたことを悔いずにはいられなかった。これでは、ケータイ破壊男と同じ穴の貉ではないか。610はこのまま、水深数千メートルの大東の海に沈められてしまう…
それにしても、今まで誰の前でも泣く姿なぞ見せてこなかった彼女が、こうして私の前で嗚咽を漏らしているのだろうか…

呆然としながら、落ち着きを取り戻した彼女はつづけた。自分の生い立ちや考え、悩み事について他人に話したのは初めてのことだという。話していくうちに、なんだかよく分からない気分になって、どうしたらいいのか分からなくなり、涙が出てきたそうだ。そしてこう言った。

「私はきっと、610さんに心を許してしまったのでしょう。もしかして、これは恋なのかもしれません。
今後、610さんのような人に出会えるかどうかは分かりませんが、その可能性はとても低いでしょう。でも、仮に出会えたとしても、今回のように強い気持ちに心を揺さぶられるようなことがあるとは思えないですし、これほどまでに自分のことを打ち明けることもないでしょう。
ダメならダメとはっきり言ってくださって結構です。この気持ちが簡単に覚めるかは分かりませんが、一生に一度だけでも、人を好いて身を焦がす思いができただけでも610さんに感謝しないといけません。
ああ、もたもたしてちゃいけないですよね。要望は簡潔に申し上げないと。610さん、私を恋人にしてくれませんか!」

なんと悩ましい申し出だろう。610だって、このように自分の考えを持ち、孤独を愛する清楚な女性に出逢えるとは思えないし、そもそも話しかけられること・話をすることも無かろう。そもそも「舞台」が北大東島という辺境の孤島であること、船が予定より1日延びたことなど、色々な要素が絡み合って今に至っているのである。因縁を感じないわけにはいかない。

そこで610はこう答えた。

「そう思ってもらえてとても光栄です。私も、あなたのような素敵な人が恋人になっていただけたら大変うれしゅう思います。
でも・・・今日、4月1日なんですよね(´Д`)」

以上の話には、真実と虚構とが入り混じっております。この真実や虚構の元ネタが何であるかは、いつか公開される大東避行の旅行記をご覧になればお分かり頂けると思いますが、もちろんそれに載っていることだけがすべてではありません(´Д`)
本当は4月1日にここまで書き上げておかねばいけなかったのですが…


Posted by Impulse610 at 06:10│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。