2012年04月29日

無に還り刹那に宙返り

5時半起床。およそ1時間後に出発。久々に気温が10℃を下回ったが気にせずツナギを着用。去年全然使わなかったのは何らかの抵抗があったからなのかもしれないが、一冬越してようやく慣れたらしい。そしてこれまた久方ぶりに胴長を持っていく。長靴を履いていれば沢登りはできるのだが、きちんと撮影しようと思うとこれが無いと濡れたり汚れたりするので、邪魔ではあるが必須である。



昨日は轢死体を見つけて不運を嘆いていたマイマイカブリが、今朝は元気に歩いていた。大きなカタツムリはすぐ手に入るので飼育するのは簡単なのだが、部屋で飼いたくない。

昨日行けなかったサラサの湿地にまずは向かう。一見雑木林のようだが地面はぬかるみ切っていて、そこここに流れがある。去年初めて来たときに感動した光景を今年も堪能できるのは実にうれしいことで、ここには来る人もいないので独り静かに過ごす時間は至福である。kojeeeさんからサラサの羽化も始まっていそうとの連絡を受けたので、いそうなところに目星をつけて、まずは抜け殻だけでも見つけ出そうと探してみるのだが見つからない。まだ早いのかもしれないなあと思いつつ動き回っているうちに、この先非常に楽しみなスポットを発見。ここはむやみやたらに公開しない方がよい気がする…



うっかり写真を消してしまったのだが、流れの中にはオタマジャクシや正体のよく分からない幼虫が蠢いている。この幼虫、一見イトトンボ型のヤゴに見えるのだが眼のあたりの形態がどことなくトンボらしくない。近くで羽化したばかりのカゲロウがいたので、きっとその幼虫だろう。ちなみに上の写真のムシはカゲロウではなくカワゲラである。系統的には近いのだが、カワゲラの翅の方が構造は複雑である。

ムカシトンボの羽化個体を見つけた時もそうだったが、血眼になって探していても見つからないものは、ふと別のことを考えながら歩いている時突然見えるものである。こうしてサラサヤンマが目に飛び込んできたのであった。



7時半にはここに来ていたので、もう少し発見が早ければ背中が割れているところを見られたかもしれないが、既に逆立ちしていた。何はともあれ、羽化を確認できたのはよかった。近くにほかの個体がいないか探しまわってみたのだが見つからず、サラサの羽化は始まったばかりなのかもしれない。そうこうしているうちに逆立ちも終わってしまい、翅を伸ばす段階に入る。一瞬だけ逆立ちをやめるシーンを目撃できたが結構機敏で驚く。






きっと1か月後にはまたここにきて成熟した彼らを追いかけまわすことになるだろう。

続いて沢に移動してヒメクロサナエの羽化を観察しつつ、高空高速飛行中のムカシトンボを見ることにする。


ニリンソウの奥で抜け殻もろとも侍っているのがお分かりいただけるだろうか









ところがサナエの方はすでに羽化が終わってしまっているようで翅を伸ばして休んでいるものばかり、そして登山道には人があふれかえっている。GWという時期と登山道という場所を考慮するまでもなく、混雑は分かりきっていることなのだが、孤独な観察を好む610には居心地が悪く、ムカシトンボも降りてこないかもしれないなと心配になる。そこで上にのぼるのはやめていつごろ彼らが下りてくるのか確かめようと思っていたのだが・・・時は午前10時7分、沢に降りしムカシトンボを発見。610にはまだ飛んでいる個体の雌雄識別能力が備わっていないのだが、メスならばもう産卵を始めているのだろうか。それなら沢歩きしながら探せるではないかということでなるべく登山道を離れて沢の中を歩いて上り下りするのだが、時おりオスらしき個体が現れては、610の目の前で高空へ飛び立っていく。とてもじゃないが撮影などできそうもなく、網で捕まえるのも至難の業ではないか(今日は捕まえる気はありません)。午前から沢に降りるとはいえ、それは一時的なものなのかもしれない。ならばもう少し待っていなければいけない。
一旦麓に降り立ってみたが胴長で歩き回るのには暑すぎる。それでもちょっとだけ歩いていた時に現れた、飛翔中の何かを素手で捕獲。



な ん だ こ れ は !
ニホンホホビロコメツキモドキだ!
このへんてこな虫は図鑑の中ではよくよく見ていたものの野外で見かけるのは初めて。符節が随分大きくて立派なのはホストのタケに引っ付きやすくするためなのだろう。脛節や腿節についているのはダニのようで、採集した段階ではこれもへんちくりんな装飾の一部かと思っていた。

そして再び沢に入る。すると目の前に何とも気品あふれる生き物が・・・



このヤマカガシはどうしてここでこんなポーズをとっているのだろう。体のくねらせ具合といい、頭のもたげ具合といい、設定場所の光線状態といい、誰かの被写体になるのを待っていたように思いたくもなる。もっと格好良く魅せるアングルを見いだせないところが610の限界ではあるが、一つ言い訳を許してもらえば、撮影直後に後ろから登山者がやってきてしまいヤマカガシの撮影会は数秒しか開催されなかったのである。
昨日の個体よりかは若干小さいが、宝篋山では一番遭遇回数の多いヘビである。

それから沢のある場所にて座りながらムカシトンボを待つ。ぬかるんでいる場所でも平気で座っていられるのも胴長の利点である。オスはだいたい7~15分おきに下流からやってきては産卵に適した場所を凝視し、メスがいないかチェックして上流へ去ってゆく。この逆の流れもあるにはあるが、610を見つけて引き返していったような印象があるので、パトロールは基本的には一方通行なのかもしれない。先ほどとは打って変わって近づいても動じることなく、一定のスピードでゆっくり飛びつつ、時折ホバリングを披露する。止まっているトンボの撮影ならそれなりに経験してきた610だが、飛翔写真は大の苦手である。まだまだ鍛錬の余地がある。
また一匹ムカシトンボがやってきた。いつものように水際のコケを凝視し、メスのチェックをしているはずなのだが様子がおかしい。飛び去らずにそこに止まってはいないだろうか。立ち上がった610の目の前にいたのはなんとメスだった!



これを見るためにここで待っていたのだ!
はるか昔から細々と営みつづけられている儀式!
場所が場所だけになかなか近づくこともできず、しかもすぐに上流へ飛び去ってしまったので「証拠写真」を撮るだけで精いっぱいであったが、今年も産卵を見られたのは非常にうれしい。撮影すること自体は羽化に次いで難易度は低い(?)産卵シーンだが、その場に立ち会えて、しかもオスに連れ去られないだけの運が無ければいけない。ここでしばらくメスがかた帰ってこないか待っていたのだが気配は感じられず、陽も弱くなってきたので帰宅を決意したのは15時手前。この時期はありとあらゆる生き物が同時多発的に出現するので身体一つでは足りないことを切に実感。

~・~・~

明日はやどけんの新歓企画のシメとして「ムカシトンボ観察」を行う予定ですが・・・有ろうことか午後は曇り空。メンバーや新入生には飛んでいる姿を是非とも見ていただきたいところですが、ムカシトンボは曇ると飛ばない頑固者ですからね…せめて静止姿だけでも拝みたいものです。

やはり予想通りでしたね。精神的に死ぬというか、婉曲しないで言えば失恋に近いものなのでしょう。
数年間いろいろ考えて積み重ねていたものが一瞬で崩れ消えていくさまは哀しい限りで、人知れずこっそり研究していた内容を、まったく知らない人が独自に発表してしまったときの研究者もこんな気持ちなのかもしれません。
なんとも遣る瀬無い21歳の始まりとなりました…


Posted by Impulse610 at 18:10│Comments(2)
この記事へのコメント
ニホンホホビロコメツキモドキ…♀が左頬が右より出てるって笑います。
ベニモンキノコゴミムシダマシ♂の角が左右非対称と似ていてなんか面白い。
いつか見てみたい。(^^ゞ
Posted by ジャワカ零 at 2012年04月29日 18:56
> ジャワカ零さん

左右対称の昆虫が多い中、こういう昆虫が大学の近くにいることが分かって嬉しいです。
Posted by Impulse610Impulse610 at 2012年04月30日 09:21
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