2014年10月27日

без названия

今朝は7時半起床、8時出発。午前中からお昼過ぎにかけてミネトワダの様子見・卵固定・飼育容器整理を行い、彼らの登場によりないがしろにされている他のカワゲラの卵固定も久々に行う。固定液を作ったりピンセットを研いだりしてラボワークを終えてから、トワダカワゲラに関する数本の論文を読む:

小松典. (1956). トワダカワゲラの成虫, 卵および 1 齢幼虫について. New entomologist, 5(3).
ミネトワダの採集時期や飼育方法についてはこの論文が一番参考になった。ちなみにこの年代にはミネトワダカワゲラは発見されていないのだが、本文中の記述から「トワダ」とされている材料は「ミネ」であることは間違いない。

Kawai, T., & Isobe, Y. (1984, January). Notes on the egg of Scopura longa Uéno (Plecoptera). In Annales de limnologie (Vol. 20, No. 1-2, pp. 57-58). EDP Sciences.
ミネトワダカワゲラの卵の報告。白飛びして全然見えない電顕写真、2ページしかない本文(うち1ページは画像で占められ、文字のページも膨大な空白がある)、このクオリティなら610でも投稿できそうな気がする。いずれにせよ画像が不鮮明極まりないので膨大なストックがある菅平で再観察しなければならない。

UENO, M. (1938). Scopuridae, an aberrant Family of the Order Plecoptera. Insecta Matsumurana, 12(4), 154-159.
トワダカワゲラをサイエンスに登壇させた上野益三氏による、トワダカワゲラ科の記載論文。この論文では北海道や朝鮮半島での「トワダ」の記載があるが、これはのちの研究により同属別種であることが明らかになっている。描図されているオスも採集地的に―武石峠とあるので上田市内の可能性が濃厚―「トワダ」ではなく「ミネ」であろう。系統関係の議論も少し書かれており、色々揺らいでいるような感じがするが大まかな結論としてはZwickの体系とそんなにずれていないようである。

Uchida, S., & Maruyama, H. (1987). What is Scopura longa Uéno, 1929 (Insecta, Plecoptera)? A revision of the genus. Zoological science, 4(4), 699-709.
今まで「トワダ」とされていたものの中に複数種(ミネ、フタカギ、ヨツカギ+韓国産の1種)を認めたり、佐渡島で記録されたものが「トワダ」のシノニムであることを記載した論文。日本産トワダカワゲラについては検索表もあるので、トワダカワゲラについて思いをはせるならこれを抑えておけば大丈夫だろう(同定形質のスケッチも丁寧で分かりやすいと思う)。ちなみにトワダカワゲラは韓国にもいるのに西日本では見つかっていない。現生種は無翅のガロアムシや幼虫が水生のムカシトンボは西日本にもいることを思うといてもいいような気がする。卒業旅行と称して西日本の沢の源流に突っ込みトワダカワゲラを探す旅をするのも楽しそうだなあ・・・

Jin, Y. H., Kishimoto, T., & Bae, Y. J. (2008). SYSTEMATIC REVIEW OF THE WINGLESS STONEFLIES, SCOPURIDAE. International Advances in the Ecology, Zoogeography, and Systematics of Mayflies and Stoneflies, 395.
今の所世界で知られている全てのトワダカワゲラ(1科1属8種, うち4種が日本産で残りは韓国産)の記載(解像度が悪いが写真付き)され、雌雄の形態形質に基づく「日本産トワダカワゲラ」と「韓国産トワダカワゲラ」の2系統の存在がなされている。Uchida らの論文を見て同定形質の把握をしてからこちらに目を通した方が形態を把握しやすいだろう。

他にも韓国産のトワダカワゲラに関する論文が存在するのだが手元にないので読んでいない。
トワダカワゲラに関する知識がいくぶんついたかと思うが、トワダカワゲラの系統的位置に関する議論はこれらの論文ではほとんど触れられていなかったので、610としては比較発生学的アプローチで挑んでいかざるを得ないことが浮き彫りになった(これを格好をつけて言い換えると、比較発生学的アプローチで解明する余地があるのだからとても楽しみである、となる)。
また、トワダカワゲラに関する論文(英語)も意外に少ないことが分かった。彼らはムカシトンボやガロアムシと肩を並べる「日本に来た海外の昆虫学者がお土産にすべき昆虫ベスト3」の構成要因であり、かつ(経験的に)もっとも採集難易度の低い虫であるのだが、そもそも610の論文検索能力が低すぎて実態を把握していない、というオチであればいいなあと思ってしまう。

論文を読んでから夕食、ノルマ達成による爽快感を大事にすべく20時帰寮。やどけんは研究会であるくせに学園祭の企画で「研究」を展示していないなあという事実に気が付いたので、スペースが許せばカワゲラの研究について紹介してもいいかもなあと勝手に思い至ったので、そのキャプションづくりを行うためでもあった。「生きている化石」ミネトワダを生きたまま展示できればいいが、そこまでしなくてもいいかなあ(膨大な液浸標本の瓶を眺めながら…) でも、日本産9科のカワゲラが一堂に集結するだけでも問題ないかもしれない。

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明日のゼミではオーストリアから来た院生による研究内容の紹介があります。その前後にカワゲラに隷属します。
  


Posted by Impulse610 at 18:10Comments(0)